胸襟を少しだけ開きたい

大学生が考えたことをつらつら書いていくブログ。本日の昼食から留学生活、勉強法から料理まで手広くカバー。

Enjoy thinking!

L'homme n'est qu'un roseau, le plus faible de la nature, mais c'est un roseau pensant.

おめでとう、君には自動車整備の才能がある

この国では少子化が進み、経済も長期的に衰退が予測されていた。事態を重く見た政府は、少ない労働者でも経済を発展させられるようにある政策に打って出た。人にはそれぞれ向き不向きがある。それを正確に測定できる技術を開発したのであった。

この国の子供は出生時に職業適性検査を受けることが義務付けられている。そしてその後の人生はその適正によってもっとも効率の良い道を進んでいく。例えば技術職の適性が認められた場合は、義務教育課程から座学の傍ら何かを製作するプログラムを受講する。研究系の技能が認められた場合は、学習内容を先取りする英才教育が施されていく。適正がある分、一人ひとりの達成する成果ははるかに多くなった。また大多数の国民も自分の仕事内容に達成感を覚え、失業率も下がり、経済はV字回復したのであった。

 

ここに一人の高校生がいた。彼は出生時に器用さと誠実さが認められ、技術系の仕事の適性があると判定された。高校では物理系の科目と実習の単位を取っている。しかし、彼はどうしても役者になるという夢が諦められなかった。しかし役者への進路は生まれたときから閉ざされている。役者への適性がある人間は、幼いころから役者になるための教育を受けている。彼は自分の夢を諦めるしかなかった。彼は高校を卒業した後、2年間の専門教育を受け自動車整備の職に就いた。向いている仕事ということもあり、夢は叶えられなかったものの、それなりに楽しく充実した生活をしている。

 

時代も場所も異なる国があった。この国では公共に不利益が生じない限りで職業選択の自由が認められ、国民は好きなように自らの進路を決定することができる。ある人は人々を病気から守りたいと医者になり、またある人はお金に関わる仕事がしたいと銀行員になった。この社会においては夢を持つことの重要性が数多く語られ、そうした国民によって支えられる社会は活力があるように見えた。

 

ここに一人の高校生がいた。彼は役者になりたいという強い希望を持っていた。周りの人も彼を応援した。彼は高校を卒業した後、役者を育てる専門学校に入学した。彼は自分の夢を叶えるべく、熱心に勉強した。自由な時間もなくなる程に研鑽に励んだ。しかし、彼には役者の才能がまったくなかった。その努力が日の目を見ることもなく、彼は年齢を重ねてしまう。今更就職しようにも、年齢と経歴がネックとなり身動きが取れない状態であった。彼は夢を追えたものの、それを達成できずにアルバイトで細々と暮らしている。