人生短し走れよ私

人生のピークを過去に設定するにはまだ早いんじゃない?

アクチュアリー試験勉強法(KKT・会計)

お疲れ様です。アクチュアリーですが、先日無事研究会員になれました。まだ一科目しか受かっていませんが、一応卵になれてほっとしています。最近勉強法などの記事を更新していなかったので、リハビリがてらKKTの勉強法について軽く解説してまいります(需要あんのかこれ)。今回は会計です。

想定読者

私は会計士なので、それほど会計という科目に時間を割いていないです。そういう特殊な人間が受ける試験だとも思わないので、初めて会計や簿記に触れるような人を想定したいと思います。まあアクチュアリー試験に会計あるし、やらないとなあ程度の人たち向けの記事ですのでご安心ください。

会計士の方はテキスト軽く一回読んで、過去問10年分解いて適宜テキストに戻って記載を確認すればおっけーです。

はじめに

さあ勉強するぞといってもまずはどんな試験かを知らねばなりません。

KKTという科目は足切りがありまして、どんなに苦手でも会計で40%取らないと不合格になります。点数で言うと、配点が25点なので10点は取る必要があります。しかしながら、難易度のブレは経済や投資理論のそれより低いように感じますので、ここは60%以上しっかり取りに行くことをおすすめいたします。

きちんと対策すればそれくらいは取れるレベル感の難易度なのでご安心ください。また会計の諸概念の説明は初学者でもわかるように崩した説明にしているので、厳密には微妙に違うことをご了承ください。

簿記の勉強について

会計といって、一般の方が一番初めに想像するのが簿記かと思います。ただ、アクチュアリー試験に関して言うと簿記は知らなくても大丈夫です。後述しますが、テキストの設例が分かればなんとかなります。会計士試験のように仕訳を書かないと解けないような問題は多くなく、あってもテキストレベルなので特別勉強する必要はないかと思います。

ただ、会計という世界において言語となるのが複式簿記という仕組みなので、それだけ覚えておいてください。数学で写像を表すのに行列使うようなものです。

はじめのはじめ:テキストを買う

アクチュアリー会のサイトに行って会計の教科書を調べましょう。テキストは『財務会計講義』という本ですが、毎年のように何かしら更新があり版が新しくなるので、最新版を買うのをお勧めします。受験料より安いのでここはケチらないで、最新情報が反映されているものを使いましょう。

具体的な勉強法

基本的な流れ

前述しましたが、想定読者を完全初学者としているため、いきなり過去問はキツいと思われます。アクチュアリー試験は過去問ナンボの試験ですが、会計と経済は初学者の場合は教科書一読→過去問と教科書参照繰り返しが一番効率良いと思います。ここからは一読する際の注意点をまとめたうえで過去問の使い方を記します。

試験範囲の特定

教科書が手に入りましたら、まずは目次を見て、試験範囲になっていない部分に×つけときましょう。2019年の場合、連結会計以降は試験範囲ではないです(正直企業結合が試験範囲なら連結も試験範囲でいいのではとは思いますが)。

第1章から第4章まで

この教科書は大学の先生が書いていて講義にも使えると謳っている通り、基本的には会計の基本書と言って問題ないです。そのため、まずは基本概念から記載されています。今の会計士試験においてはこういった基本概念から問題が出ることが少ないのですが、アクチュアリー試験では割と出ます(筆者は試験対策としてはここの勉強を一番しました)。会計士の方は復習がてら読んどきましょう。

まったく会計の知識がない方は、素直に頭から読んでいきましょう。会計の意義や財務会計の機能、複式簿記の特徴が分からないと、その後の勉強がただの暗記になってしまい厳しいです。試験に出るという意味では割とまんべんなく出るため、まずは広く浅くへえこういう世界があんのねくらいで大丈夫です。

第1,2章については、簿記に触れたことがない人は特に複式簿記という概念だけはおさえておきましょう。あと誘導法棚卸法の違いや、クリーン・サープラス関係は割と大事なので理解しときましょう。

第3章は前半は読み物でも大丈夫です。もし過去問に出てれば見直す程度の温度感ですね。ただし、会計公準3つや一般原則はしっかり読みましょう。おそらく初学者は会計情報の質的特性辺りでよくわからなくなる人もいると思いますが、基本的に企業会計原則が古典的な会計原則で、概念フレームワークは会計のとらえ方の新しい考え方ってくらいの理解で大丈夫です。会計士試験では圧倒的に後者が問われますが、アクチュアリー試験は前者がよくでますね。私も忘れかけてたので細かいところは復習しました。

第4章は結構大事で、現金主義会計という家計簿的な会計と発生主義会計といういわゆる私たちが簿記で習う会計の違いが書かれてます。このあたりから設例が出始めるので、設例は解けるようにしておきましょう。とりあえずは発生主義会計という概念を知り、現金主義で帳簿をつけると色々不都合だということをおさえとけばOKです。資産の評価については、アクチュアリー試験を受ける方ならすんなり入ってくるかと思います。日本の会計では、資産の計上額は買った時の対価(取得原価)とこの金額なら売れるであろう金額(時価ないし公正価値)の双方を用いているので、それだけ知っときましょう。前者は買った企業がそのまま売る気のないもの(すなわちそれらを使って何かを生み出そうと考えているもの:建物や機械など)に適用され、後者はそのまま売ろうとするもの(商品や値上がり益を獲得するために取得した有価証券等)に適用されます。

第5章から第9章まで

第5章から第9章までは、基本的に資産サイドのお話になります。貸借対照表の左側ですね。この辺りは設例が解ければ大丈夫です。基本的に読んでいって教科書のどの部分が設例を解くのに必要なのかをおさえていきましょう。収益認識辺りは一部難しいこと書いてありますが、最近の改正論点ですし、出てもアクチュアリー試験の母集団だとみんな解けないので多分出ないと思います。また会計士試験受験生が親の仇のように恨んでいる特殊商品売買も過去問では私の見た限りでは出ていないので、そんな気にしなくていいかなと思います。

というか、上記の収益認識基準とかは問題として出すのが難しいので、いったん置いておきましょう。過去問見ると、結構出るところ決まっているという印象を持つと思います。減価償却とかは死ぬほど出ますが、売価還元法とか出ないです。

後はつまらない暗記ですが、無形固定資産の例示とかはおさえとくといいですね。アクチュアリー試験の文章正誤判定に使いやすいです。

第10章

ここは負債サイドのお話です。貸借対照表の右側です。この教科書の面白いところは、資産サイドは割とページ割いているのに負債と純資産にはさしてページ数割いていないことなんですよね。とりあえず負債って何だっけという話、引当金という会計特有の負債の話をおさえましょう。

あと唐突に税効果会計という概念が出てきます。こちら深追いすると沼にはまるので、軽く会計上の収益費用と国が認める益金損金って違うのね、その差額で法人税等の金額変わっちゃうから調整しないとね、くらいの理解で大丈夫です。過去問見る限り深追いしてもコスパ良くないので、繰延法資産負債法の意義を理解して設例解けるようにだけはしときましょう。

あとは社債周りの計算はまあまあ出るので頑張りましょう。慣れれば難しくないですが、利息法の償却が初学者には取っつきずらいと思います。新株予約付社債も唐突に出てきますが、社債にプラスして一定金額払って株式と交換する権利をくっつけたものです。会計士試験ではさすがに解けないと不味いですが、アクチュアリー試験で考えると余裕がある人はやっとく程度ですかね。

退職給付引当金の計算は、アクチュアリー試験の受験生はやっとくべきでしょうね。年金数理の計算結果の会計上の取り扱いなので、今後のためにも大事です。ただやはり沼にはまる可能性があるので、設例解ければOKです。資産除去債務も同様です。ぶっちゃけ会計士試験受験生もこの辺り苦手な人多いので、計算は難しくなければ解ける、文章正誤は正解できる程度の粒度で十分かと思われます。

第11章

ここは純資産のお話です。貸借対照表の右下です。会社の保有している資産がここに記載されます。相変わらず誤用の続く内部留保議論を正しく理解する一般教養として知っといて損はないですが、試験という意味ではやはり設例をおさえるのと、実質的増資形式的増資の違い、新株予約権ストック・オプション自己株式辺りをおさえときましょう。組織再編は沼エリアなので、深追いしなくても設例解ければ大丈夫です。とりあえず会社と会社を合体したり分離したりするときにはいったん時価でやるべきだよね、でもグループ内で取引するときに利益や損失とか出たらおかしいからその時はそうならないようにしようね、ってことが書いてあります(ほんとはもっと細かいのですが、ざっくり言うとそんな感じです)。分配可能額は出題実績こそあるもののパターンが多くてしんどいので記憶できる人は覚えておくレベル感ですかね。

第12章

ここは第1章から第4章に近い原則論的な話に戻ります。とりあえずおさえるのは会社法金商法で財務諸表の範囲が違うことです。正誤問題でよく出ます。リサイクリング(組替調整)も過去問では出ているのでおさえておきたいところですが、やや概念としては難しい部類に入る(クリーン・サープラス関係、資産負債アプローチやら包括利益やらが絡んでくる)ので、余裕のある人はその他有価証券の設例を見ておきましょう。

あとは、四半期特有の会計処理は計算をおさえましょう。それほど負担多くない割にはよく出ている印象です。四半期財務諸表というのは、上場企業等に3か月に一回は情報開示しろやというルールがあるので発行されるものです。企業としても3か月に一回の頻度でがっちり数値固めるのは大変(経理の気持ちになりましょう)なのと、季節変動が大きい企業は売上などが大きく変動する(ビール会社とかを考えてみましょう)ためその辺の事情を考慮して特例的な処理が設けられています。

ここまでで一応試験範囲は網羅したことになります。あとは過去問をガンガンやっていきましょう。

過去問の使い方

まあアクチュアリー試験の受験生には釈迦に説法な気もしますが、会計についても過去問至上主義で結構です。教科書一読したらさっさと過去問演習に移りましょう。

過去問は文章穴埋め、文章正誤問題2パターンと計算問題に大別されますが、まず文章穴埋めは難易度低いのでここは良い点を狙いましょう。文章正誤は最初の方(すべて選べ)の方がきついですがもう一方(4つの文章の正誤問題)は比較して難易度落ちるのでこちらは頑張りましょう。計算は設例レベルなので、教科書の設例ができれば問題ないです。

基本的に会計に関して時間をかけていると経済と投資理論で詰むので、会計のみやるのであれば30分-40分くらいですべて解き切る感じでしょうか。まず過去問解いてみて、穴埋めや正誤問題で間違えたところは教科書に戻って必ず前後の関連する部分も通読して知識の漏れをふさいでいきましょう。計算問題はどこが分かっていなくて間違えたのかを分析し、それを教科書に戻って埋める形になります。2回目は満点が取れるくらいの意気込みで復習をすると良いです。

おわりに

今回はKKTのうち会計の勉強法でした。KKTのうち会計は25点しか配点がないので勉強時間のバランスが大事です。早めに過去問演習をしてどの辺りが良く出るのかを感覚としてつかむと良いかと思います。最低でも10年くらいはやりましょうね(筆者は7年くらいしかやってないですが)。

ではでは。暇ができたら経済と投資理論も書きます。